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ほろほろ

〔神奈川〕2008年3月1日-3日/PRUNUS HALL

▽ チラシより(藤田貴大)

母と、母が住んでいたアパートを探しに言った。
アパートは、もうなかった。
母は少しだけ黙り、そのあと、笑った。
22歳も終わりに差し掛かっているが、相変わらず、フラストレーションを抱くばかりだ。
今、世界が滅亡するとしても、僕はそれを抱えたまま、一人で悶々と最期を待つだけだろう。
母が黙って、笑うまでの、その一瞬に、僕は少し懐かしさと、少しだけ、新世界を感じた。
初春、記憶探しをひりひりと行いたい。
それで、ほろほろと、散り散りになりたい。


藤田貴大

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▽ チラシより(藤田豊久/藤田父)

 「息子へ」


2004年319日、息子は北海道伊達紋別を東京に向けて出発した。それぞれの旅立ちを間近に控えた5人の友人が見送りに駆けつけてくれた。演劇に夢を求めての東京行きである。

あれから4年、決して楽しいことばかりではない状況の中で、さまざまな人達に出会い、新しい自分を発見しながら夢を追い続けているようだ。


いつか、「もう一度、新しい友人を連れて、観に来たいと思えるような演劇」を、息子は一生に一本作る事ができるのだろうか。


こんなことを考えながら、貴大が故郷で、10代から80代までの人が感激できるような作品を上演する日を、父は夢みている。

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▽ パンフレットより

「ほろほろ」


今まで、たくさんの人と別れてきて、きっと、これからも、別れるだろうと、
そう思って、この作品は出発した。
記憶を巡ってみても、思い出すのは、断片的な、
しかも、ぼやけて色褪せた、曖昧な風景で、
そんな、脳内の、それに、
フォーカスを合わせ、シャッタースピードも最速に上げて、
記憶の一瞬を、捉えようと試みた。
それが、どれだけビビットに映ったか、
もしくは、もう、記憶は、ぼやけたままなのか。記憶に、立ち止まってはいけないのか。
また、春が来たら、
それぞれ、新たな記憶を求めて、散り散りになる。
もう、
口の中じゃ、鉄の味で満ちていて、
匂いは、もう、夏を意識している。
街は、着実に、進んでいる。
さよなら、さよなら。
先に、行きます。

藤田貴大

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出演

青柳いづみ 池口 舞 石井亮介
伊野香織 
小椋史子 熊木 進
斎藤章子 田中美希恵 
辻 賢二
成田亜佑美 松原由佳 緑川史絵
召田実子 横山 真 吉田彩乃 若林里枝

スタッフ

作・演出/藤田貴大
舞台監督/森山香緒梨 島田佳代子
 照明/吉成陽子 芹川直子
音響/花嶋弥生
演出助手/亀井佑子
宣伝美術/本橋若子
制作/林 香菜 前田安寿子 持田喜恵

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