小指の思い出

2014年9月29(月)−10月13月(月)東京芸術劇場プレイハウス
撮影|篠山紀信

チラシより

野田さんの作品を観たのは10代のころだった。世界は2001年になろうとしていた。田舎では、舞台なのに舞台をLIVEで観れない。だから先生にVHSを何本も借りて。夏休みとかに、かき氷食いながら。とにかくたくさん、手元にあるだけのVHSを観尽くした。ビデオテープはすこし伸びている。不安定な画面に映っている彼らは、夢の遊民社、というらしい。わけのわからない感情が、ビビッドに。あのころのぼくに突き刺さってきたのを憶えている。一際、すっかり惹かれてしまったのが、小指の思い出。なにもかもが遠くに逃げて行ってしまうような感触。決して戻らない時間。LIVEとして、あの時間を。2014年に再び舞い降ろしたい。

藤田貴大

パンフレットより『小指の思い出の思い出が』

中学三年のころ、育った田舎町で、VHSで観た『小指の思い出』と、今回、こうして向かい合った『小指の思い出』の思い出が、これからのぼくに、なにをもたらすだろうか。

夏の暑い日だった、ぼくはそのころも演劇に明け暮れていた。ただひとつ、不安なことがあった。こんな小さな町で演劇をしていたって、たぶん通用しないのだろう、と。『小指の思い出』が映る画面の向こう側には、東京が広がっていた。それは、ちっぽけなぼくにはたぶん、到底、通用しない世界だった。

上京して、ちょうど10年が経った。『小指の思い出』を演出することになって、この作業はまるで記憶を探すような作業だった。中学三年のころに繰り返し観た、あのVHSの記憶。83年、すなわち、ぼくがまだ生まれていないころの記憶、質感。

くるしい作業のなか、救いになっているのは、登場人物のみんなが、自分を探している、ということ。自分とは何者なのか、いま、どこにいて、いつの時代に生きているのか、みんな、葛藤している。

現在、2014年として、葛藤している。2014年として、音も光も、ひとも、現実も、妄想も紡がれる。

ぼくに、なにをもたらすだろうか。
なにが、待っているだろうか。
ぼくは、ヒカリになれるだろうか。

あのころ、あの町にいたころと、まったく同じように、不安である。暗闇のなかにいるような、そんな感覚である。

冬になる。
ヒカリを探している。

9月14日  藤田貴大

出演

勝地涼
飴屋法水
青柳いづみ
山崎ルキノ
川崎ゆり子
伊東茄那
小泉まき
石井亮介
斎藤章子
中島広隆
宮崎吐夢
山内健司
山中崇
松重豊

ミュージシャン

青葉市子
Kan Sano
山本達久

スタッフ

野田秀樹
演出
藤田貴大
zAk
照明
富山貴之
衣装
スズキタカユキ
(suzuki takayuki)
ヘアメイク
赤松絵利
舞台監督
森山香緒梨
技術監督
小林清隆 今野健一
音響部
東岳志
照明部
江森由紀 久津見太地
演出部
杣谷昌洋 丸山賢一 加藤 唯
衣裳部
田近裕美
ヘアメイク部
伏屋陽子
アシスタント
小椋史子 吉田聡子
アシスタント・映像プラン
召田実子
映像オペレーター
三上亮
文字・宣伝美術
川名潤
宣伝写真
川島小鳥
宣伝ヘアメイク
HIROTAKA/Sin
宣伝スタイリスト
UNO
企画アドバイザー
徳永京子
企画制作
東京芸術劇場
(公益財団法人東京都歴史文化財団)

クレジット

主催
東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)
東京都/東京文化発信プロジェクト室(公益財団法人東京都歴史文化財団)