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あ、ストレンジャー

〔東京〕2011年4月1-4日/SNAC

撮影:飯田浩一

▽ パンフレットより(藤田貴大)

「四月の始まりと、異邦人が終わったあとの、あ、ストレンジャー」


三月も、もう終わります、

(つまりこの文章は、三月も、もう終わるって頃、ぼおんと、磨りガラスの窓の向こう、朝日が登り始めた、っていうのを、布団の中で眺めながら、書いています、)


もう少しで、四月が始まります、『あ、ストレンジャー』は、四月の始まりに始まって、四月の始まりに終わります、


(布団を出ることにします、机の上で林檎が腐っています、部屋を出ます、近所の小学生がワイワイと登校しています、子どもたちは頭がでかいから、すぐに転んじゃいそう、)


『あ、ストレンジャー』はカミュの異邦人の第一部までを、つまり、ムルソーという青年の母親が死んでから、五発の銃声を鳴らすところ、までをモチーフに描いています、僕なりに、ですが、


(電車に乗ります、いつも稽古をしている横浜へ向かいます、いい香水の匂いがする女性が、僕の肩に寄りかかり、寝ています、)


何かの拍子に、いつも通り、は、ぐらりと揺らいで、いつもの風景も、いつもの会話も、なにもかもが変わって、見えて、聞こえて、ムルソーが鳴らした五発の銃声すら、何かへの警鐘に聞こえて、ってことを、僕は、僕なりに、異邦人を、或いは、異邦人が終わったあとの異邦人を、作ってみようと思いました、それが『あ、ストレンジャー』なのだと、今は、思っています、


(そろそろ横浜に着きます、と、同時に、この文章も、そろそろ終わります、)


異邦人が、今、と、コミットしていくには、生まれ変わり、つまり、リボーン(Reborn)、の、作業が必要だったし、そのためには、異邦人に、僕の生活、日常を、リミックス(Remix)していく必要もある、と、僕なりには、感じて、つくっています『あ、ストレンジャー』。


三月も、もう終わります、四月も、もう始まって、それもいつか終わるんだけど、僕らの、Re、の作業は終わりそうにありません、三月末日。


2011.3.28 藤田貴大

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出演

青柳いづみ 荻原 綾 尾野島慎太朗 高山玲子

スタッフ

原案/「異邦人」アルベール・カミュ
作・演出/藤田貴大


照明/明石伶子
制作/林 香菜

主催/マームとジプシー
共催/SNAC/吾妻橋ダンスクロッシング

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