ひび

ひびの、A to Z 〜夜汽車のゆくえ!ver.

〔東京〕2019年11月8日-10日/VACANT

▽ WEBサイトより(藤田貴大)

この秋、三年目のひびの発表会をするということで、26人のみんなを観察しつづけているけれど、それを今年は「ひびの、A to Z」という作品を展示してみたりした一年ではあったが、しかしどうやって、なにを発表しようか、というか上演しようか、と悩んでいて。さいきんうすうすおもっていたことが、確信にちかい気持ちとなってつながったのは、ここに集まったみんなのかんじをミュージカルにしてみてはどうか、ということ。ミュージカル。あこがれの、ミュージカル。ぼく個人の夜汽車の記憶と、みんなの日々を混ぜこぜにして。なんのことか、とおもわれている気がしてならないが、展示した「ひびの、A to Z」の、夜汽車のゆくえ!ver.を、ミュージカルとして、つくってみようとおもう。

2019.10.6   藤田貴大

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▽ STORY

気がつけば、始発か終電にしか乗っていなかったわたしたちの、
昼間という時間がまるで抜け落ちてしまっていた数日間のこと。

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▽ パンフレットより(藤田貴大)

一年間、ひびのみんなとまたこうして過ごしておもうのは、いつもちがうことだった。じぶん自身の日々というものは、そしてそれに生じてくるヒビというものは、とかんがえたみたときに、果たしてじぶんはそれらに直面したときに立ち止まるのか、という風におもえてしまったのが三年前のこと。マームとジプシーという名が持つ速度を、すこし緩めるようなイメージで「ひび」という場所をつくったのだった。あれから毎年、いろんなひびと関わって、ぼくは記録してきた。しかしこれは当たりまえのことかもしれない、おもうのはいつもちがうことだった。今年は特に、さいしょからなんだか歪なものをかんじていた。ちぐはぐで、まとまりのない。何年かここにいるひとも、今年がはじめてのひとも、目がどこか不安げ。なんとも言えない不思議さをたのしんでいたのはぼくだけなのかもしれないけれど、とにかく面白かった。ひとと共有できない面白さほど面白いものはないのではないだろうか。そして日々というのは、ヒビというのは、ほんとうのところ、だれかに連絡できたりはしないで、ずっとじぶんのなかでとどまっていたり、ひっかかっていたりするものなのではないかと発見した。演劇というものをいつもつくっていると麻痺してしまうことのひとつに、どうにかしたらかならずだれかはわかってくれるのではないか、というのがあるとおもう。それはまったくの、おもいちがいだとさいきんはおもう。ひとというのは、ひとのことが基本的にはわからない。言葉をきいても、読んでも。おそらく、わかっていない。しかし、わかりやすさをたのしみたいときがあるのもわかるし、わかった気がした瞬間はうれしいのだろうから、それはそれでいいのだけれど。でも基本的にはわからないとおもうのだ。というか、わかっていないとおもう。だって、わかったことなんてあるだろうか。ぼくはやはりないのだ。ひとのこと、どんなちかいひとのことだって、わかったことなんてない。おそらく、だれしもが個人であるということでいいのだ。ひとりひとりがいて、ひとりひとりがある。

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それでも、わかりたい、わかってみたい、というひとたちにぼくは出会えた。共感はできない、けれども共有はできるかもしれないとおもうから、こういう時間、そして場所をつくっている。

2019.11.6 藤田貴大

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<出演者>
(映像出演含む)
乾真裕子 梅崎彩世 太田順子 小川沙希
小西 楓 近藤勇樹 斉藤 暉 櫻井碧夏
佐々木彩音 佐々木 菫 佐野明日奈 猿渡 遥
志村茉那美 須藤日奈子 高橋明日香 豊川弘恵
中村夏子 南風盛もえ 花井瑠奈 的場裕美
宮田真理子 森崎 花 山中慶子 山林真紀子
油井原成美 渡邊由佳梨


<スタッフ>
構成・演出/藤田貴大
主催・企画制作/マームとジプシー
協力/VACANT
助成/公益財団法人セゾン文化財団