マームと誰かさん・ふたりめ飴屋法水さん(演出家)とジプシー

2012年6月1日-3日SNAC
撮影|橋本倫史

飴屋法水(演出家)×藤田貴大(マームとジプシー)対談

5/16 AM6:10

築地市場に集合。活気に溢れた朝の市場をみんなで歩く。飴屋さんは卵焼きを買い、コーヒーを飲み、マイペース。青柳いづみはイカのキーホルダーを見つけて喜んでいる。おばさんから、古びた、今はもう使われなくなった計量器を譲ってもらった。みんなで海鮮丼を食べる。飴屋さんが「海はどっちですか?」と市場の人に訊く。勝鬨橋を渡って、河口付近を眺めながらなんとなく話が始まった( 構成…藤原ちから)

■ウミネコ、カレイ、ヒトデ、星人など

(築地市場の対岸、隅田川・勝鬨橋のほとりにて)

飴屋冬に室蘭に行った時にいたから調べたら、カモメは渡り鳥だって。 藤田へー、渡り鳥なんだ? もっと寒いところからやって来るのかな。ぼくの実家の伊達(北海道伊達市)はカモメじゃなくてウミネコだと思うんです。 飴屋ウミネコはミャーッて鳴くからね。だから君が見てるのはウミネコ。 藤田飴屋さんが育ったのは海があるところ? 飴屋小田原は海があるね。高校の教室、高台で、窓から海が見えたよ。すぐそばに小田原競輪場があって、カンカンカンって鐘の音が聞こえてきた。その真横に女子校があった。白いハズレ券が舞うの、綺麗だったよ。登下校コースに赤鉛筆耳にさした予想屋さんが並んでて、ちょっとガラ悪かったけど、だから競輪場の向こうに海が見えたね。 コロスケ 競馬とかよりガラ悪い? 飴屋「馬好き」とかいう言い訳ないからね(笑)。 藤田「競艇まで行ったらヤバい」って言いますよね。 飴屋馬はまだ生き物だからね。それが自転車になって、モーターになって。機械だから。 コロスケ くんちゃん、背中に虫ついてるよ。 召田お友達連れてきちゃった? くるみどこ? コロスケ ここ、黒い虫。 くるみひゃあー 藤田でも今回は海じゃなくて、空の話をしたいんです。 コロスケ なんでここ(築地)に来たの?んだっけ? 藤田SNACのある清澄白河がここから意外と近いけど、何も海を感じないというのもあったし。 飴屋ぼくこないだ、こことそっくりな場所に居たよ。 デバ(村田)あ、似てるかも。 飴屋ちょうど河口で、実際には川なんだけどほとんど海な感じ。水揚げ場とか荷揚げ場って呼ばれてる。すごく魚臭い。凄かったのは、網にヒトデがひっかかってて。 藤田ああ、ヒトデ、ぼく苦手なんですよ。大嫌い。伊達にはヒトデが2年に1回くらい大発生する海岸があって、一面ヒトデになった時はひどかった……。 くるみわー、どんどん来たわね!のぼってきたわね! 藤田切っても切っても再生するんです。それを弟が、殺しまくるんですよ。その光景が忘れられない。ぐちゃぐちゃ、なんか、触っても触っても感触が……。 召田くんちゃん、虫どっかいっちゃった! くるみリュックにいるよ。 飴屋そういえばさ、Kの時、藤田くんの地元には行方不明の貼り紙が多い、って言ってたでしょ?僕、その荷あげば、ってとこで行方不明の貼り紙見たよ。「行方不明のカレイ探してます」って。 藤田えっ、どういうこと? 尋ねカレイ? デバ「できるだけ生け捕りでお願いします」って(笑)。 藤田でも飴屋さん、地方公演で室蘭に行ったんですよね? 多くなかったですか、貼り紙? 飴屋気づかなかったな。室蘭の記憶はとにかく劇場がカビ臭かったという……。で、喫茶店に入ってもカビ臭くて全然、憩えないっていう…。 デバ霧が出てるから。 藤田あの町自体、潮風が当たりますよね。海に向けて坂がすぐあるから。七尾旅人さんのシャッター商店街の歌も、あれかなり室蘭の感じあるんすよ。 飴屋伊達って北海道のどのあたり? 藤田室蘭の左上です。湾になってるところ。あの海を太平洋、って呼んだことはないですけど。 飴屋なんで「蘭」の字が入ってるんだろう。 藤田アイヌ語の当て字かな(*アイヌ語の「モ・ルエラニ=小さな坂道の下りたところ」が語源とされる。明治期の呼称はモルラン)。伊達は、伊達政宗の末裔が入植してきたからですけど。……あ、さっきより川の流れになってきた。 デバほんとだ、流れが速くなってきた。 くるみたいへんだよ! たいへんだよ!たいへんだよ! 藤田どうした? くるみ星人たちがね、海に落っこっちゃったの!  藤田ハッハッハ(笑) くるみ自分で落っこっちゃったの! 藤田くんたーすけてよ! 藤田ハハハハ(笑)。星人ってなんすか? コロスケ 怪獣みたいな?透明の星人がいるみたい。 飴屋そば屋に行くと、4人目の席に座らせるんだよね。  藤田なんかぼくもそういうのあって、「親が自分の本当の親じゃない!」って小学校3年生くらいまで思い込んでたんですよ。寝たら、ぼく以外の3人がミーティングしてると思ったら怖くて眠れなくて。 飴屋あー、え? それでマームでは役者の自主稽古禁止してるの? 藤田そこから始まったのかな。ぼくがいないところでぼくの話されるのってほんとイヤなんですよね。 飴屋自分の親じゃないとか…コロちゃんとか思いようがないよね、お父さんそっくりすぎて。 コロスケ え?そんな似てる? 飴屋似てるっていうか初めて会った時、新宿駅で、向こうから白髪のコロちゃんが来たと思ったし。 藤田(笑)……でもぼくの小指、全然カタチ違くないですか?小3の時、隣の席の女の子に「そこ骨折してない?」とか訊かれたんですけど、これ、父親がまったく同じ小指してて、あ、息子なんだなと思った。 コロスケ それで疑惑が晴れたんだ? 藤田偏食とかも治ったのが小学校3年の時で。それまでは、親以外から与えられる食べ物がほんとに怖いと思ってたんですよね。

■空=ソラ/カラ

(勝鬨橋ほとりのデニーズに移動。話してる横でくるみちゃんが召田実子、青柳いづみと遊んでいる)

店員いらっしゃいませ、おはようございまーす。デニーズへようこそ。 くるみこんにちは!  実子よいしょ、よいしょ。 くるみカメくーん! 藤田前回の﹃マームと誰かさん﹄の大谷能生さんとの作業でも即興について考えたんですけど、例えばサックスもかなり厳密に楽器だし、拍とかもあるし、即興といえどもゲーム性があるわけですよね。そういうルールができれば、飴屋さんがむしろもっと自由にやれると思ってます。なんでもやっていいよ状態になった時の不自由さもあるから。自由すぎる不自由さというか。 飴屋即興にもいろいろあるとは思うから、ある種のルールの範囲内でのアドリブもあるし、ほんとにルールもかなり無いような場合もあると思うのね。ぼくは大友良英さんに呼ばれて即興をやることが多くて、いつも「なにやってもいいですから」って言われて、いつも困るんだよね……。 藤田ぼくも役者だった時、そういうこと演出家に言われたらキレてましたよ。「なんでもいいって何?!」って(笑)。 飴屋いや大友さんにはキレたりしないけど、ただ途方に暮れちゃうんですよ。なんの踏み台となるようなルールが何も無いならどうしようって思うんだけど、そういう時はしょうがなく身体を使うことが多いよね。身体にはすごくルールがあるから。呼吸にしたって。 藤田飴屋さんに途方に暮れてほしい感じもあるんだけど、ひとつ基準をポンって置かれたほうが自由になるのであれば、置きたいです。その配置によって飴屋さんがしょんぼりしてくか、生き生きしてくか、そこに尽きる感じがします。大谷さんとの作業では2人の中で生まれてきたものを書いたから、シーンを起こしてくというよりは「音についてのぼくらの考え方」になっていた。今回の飴屋さんとの作業はまたどうなるか……。もうちょっとドラマになる予感もしてます。 飴屋今のことろ謎ですよね。 くるみ悪者に撃たれちゃったのね!だいじょうぶ! 藤田くんちゃん、今日ずっと悪者に苛まれてるな。オバケとか(笑)。……今回はある男の空想の話なんですけど、今、空想を10個作ろうとしてて、それは車にはねられたあとの走馬燈かもしれないけども、とにかく10 個つくったら完成だと漠然と思ってる。先週くらいから「空」っていうことが、いろんな言葉に置き換えられはじめてて……。 飴屋滞空時間とかね。 藤田1秒めは宙に浮いてて、2秒めはもう地面に落下してる。その1秒は人生ほど長い瞬間かもしれないし、宙を舞ってる瞬間をやりたいっていう。なんかそういうメールを飴屋さんに打ったら、「空(ソラ)」を「カラ」っていう言い方にしてくれたんですね。そういうふうに「空」って言葉から連想されるものが繋がってきてる。

■「死」までの数秒間

くるみ……わああー、骨が折れてくるよ。とにかく、落ち着こ、落ち着こ……。 藤田そういえば飴屋さんと車の事故のことについてまだちゃんと話してない気がして。この一連の4月から5月に事故多かったですけど、ただ悲惨だね、って話じゃなくて。 飴屋確かに続いてるから怖いってこともあるけど…僕はもともと車がすごく怖いんです。いちばん最初に車の事故を意識したのは、Kさんのことだと思う。ただ横断歩道を歩いてたら車が突っ込んできて……昔その話しましたね。初めて藤田くんに会った時だ。事故後Kさんはほとんど意識がないような状態で、そのまま長い時間が流れた……そういう時間があるとして、そういう時間をかろうじて書けるのは藤田くんなんじゃないか、みたいな話を……確か清澄白河で、SNACのすぐ近くの、確か「だるま」という店で ……。僕はそれ以来、キミの作品は全部見届けてるよ。 くるみ……間に合わないって言ってるんだ。でもひとりぼっちは……どうしよどうしよどうしよ……姿見えないの! 召田くんちゃーん。ああー(水がこぼれた) くるみだいじょうぶ、濡れても。濡れてもだいじょうぶなやつなの! 藤田記憶を描くうえで「死」っていうのは切り離せないものだと思ってて。「死」というのはぼくにとって記憶の入口だったりするんです。でもそれを「喪失」ってことだけで考えるとつらいんですよね。こういう場で言うと綺麗事になっちゃうけど、深夜バスのこともあるし、いろんなことがあったから。死ぬその瞬間までの何秒間かで何を思い出すかっていうことに、今、興味があって、それを考察することが表現にするにあたって必要なこ とかもしれないと思ってます。「死」ということが「哀しい」ってことだけに落ち着くのが今はつらいんですよね。

出演

青柳いづみ 坂口真由美 村田麗薫 飴屋法水
カントゥス

スタッフ

作・演出
藤田貴大
照明
明石伶子
スタイリング
コロスケ
アシスタント
西島亜紀 召田実子
パンフレット原稿
藤原ちから
制作
林香菜
舞台写真
橋本倫史

クレジット

主催
マームとジプシー
共催
SNAC/吾妻橋ダンスクロッシング