ワタシは、通り過ぎた。あの頃、ワタシたちが。
たしかに、住んでいた。あの場所を。ワタシは。ワタシは、通り過ぎた。

ワタシんち、通過。のち、ダイジェスト。

[東京]2012年9月7日-17日三鷹市芸術文化センター星のホール
[北九州]2012年9月28日-30日北九州芸術劇場小劇場
撮影|飯田浩一

チラシより

僕は思い出している。 常に思い出している。
あの家でのことを。 生活の、匂い。音。
僕は思い出している。 常に思い出している。
でも僕はいつしか。 あの家を通過した。
家を。街を。捨てた。 僕は思い出している。
常に思い出している。 今、ひとつの家が。
僕の、大切な家が。 壊されようとしている。
僕はそのことについて。 描かなくちゃいけない。
少し大きな規模で。 でも隅から隅まで。
家の。家族の。機微を。 描かなくちゃいけない。
僕は思い出している。 常に思い出している。

6/28 藤田貴大

パンフレットより「それをえがく、そのひつようと、せきにんなどについて」

極々、個人的なことなのだけれど、ぼくの祖母の家が無くなる、という風になっている。

ぼくはそれを描く、必要を感じているし。それに、どうやら。責任も感じているようだ。

家が無くなる。それは帰る場所が無くなる。ということでも、あるのだろうか。だとしたら。今まで、どれくらいの人たちが帰る場所を失ったのだろうか。

ぼくはそれを描く、必要を感じているし。それに、どうやら。責任も感じているようだ。

想像しながら。ぼくらは相も変わらず、繰り返す。繰り返し、想像する。想像の果て、ひたと身体に。言葉も音も。まるで着床して。何か、得体の知れないものが産まれるまで。繰り返す。繰り返す。

でも、そんな作業を。愚直にしたところで。

いよいよ帰る場所が無くなる。という。帰る場所を失う。という。まさにそのときに。

なにを想うのか。なにを思い出すのか。わからなかった。
でも、その、わからなかった。という、そのことが。

ぼくにとって。それは未来だったのだった。

また繰り返し、思い出すのだろう。そして繰り返し、想像するのだろう。たとえあそこが、そこに家があった、という痕跡すら残らないくらいの平地になったとしても。

ぼくは、ぼくのなかにある記憶の跡地へ。繰り返し、辿り着こうと。永遠に。彷徨うだろう。

ぼくにとって。それが未来だったのだった。

9/6 藤田貴大

あらすじ

取り壊される家。そこに住んでいた人々。 或る家の始まりから終わりまでの時間を。
或る家の始まりから終わりまでの記憶を。 遡って。彩って。鮮やかに。思い出して。
ワタシたちの。過去と現在。そして未来。

出演

伊野香織  石井亮介
荻原綾  尾野島慎太朗
斎藤章子  高山玲子
成田亜佑美  波佐谷聡
召田実子  吉田聡子

スタッフ

作・演出
藤田貴大
舞台監督
森山香緒梨
照明
吉成陽子 富山貴之
山岡茉友子
音響
角田里枝
舞台美術
細川浩伸
宣伝美術
本橋若子
制作
林香菜
舞台写真
飯田浩一

クレジット

主催
[東京公演]公益財団法人三鷹市芸術文化振興財団
[北九州公演]マームとジプシー
共催
[北九州公演]北九州芸術劇場