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「手紙」展

2018/04/20

「みえるわ」と題したこの作品は、2018年の春に、全国10都市11会場を巡演しました。
その旅を記録した「手紙」を展示いたします。
写真と文は橋本倫史さん、デザインは名久井直子さんが手がけた37通の「手紙」です。
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<展示によせて>

演劇というものは、現在という瞬間にだけ存在します。記録映像を残すことは可能でも、上演とはやはり別物で、その時間に劇場に足を運んだ俳優と観客のあいだにだけ存在しうるものです。それに対して、ドキュメントとして書き記された言葉は常に過去にあります。そこに書き綴られた風景というのは、すでに過ぎ去ってしまったものです。その言葉というのもまた、読者の目に触れる瞬間から見れば、過去に綴られたものです。

どうすれば現在という瞬間にだけ存在する演劇を記録することができるのか。そこで僕は、手紙としてドキュメントを書き記すという方法を選んでみました。ツアーに密着して全国を巡りながら、その土地土地で言葉を綴り、旅先から手紙として発送する。片面にはテキストが、片面には写真が印刷された手紙は、それぞれの土地の風景印を押してもらって投函しました。全部で37通をかぞえる、旅の記録です。(橋本倫史)
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彼の目に映っていた、みえるわ。
言葉の瞬間に、目を凝らし、
耳を澄まし、綴り、過ごした日々は、
どういう風に、どこへ届いて、だれに残るのだろう。
藤田貴大(マームとジプシー主宰・演劇作家)
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三月が終わり、大好きな四月がやってきて、
五月を通り越して、そうしてまた六月になる。
わたし達のみたもの、みなかったもの、
かたちのないもの、ほんとうにはないもの、
それらは言葉となって、ずっとずっと残ってゆく。
青柳いづみ(女優)
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過去も、未来も思い出も想像も、ぜんぶが「今」に立ちあがる不思議。そしてその「今」は、言葉にすることができないということによってのみ存在するという、これまた不思議。
わたしら何をしてるねやろ。何にむかって何のために、一回きりや今を、なんで別のものに置き換えていくことをやめられんのやろ。
藤田くんが青柳さんを、橋本さんがふたりを、青柳さんが藤田くんを、言葉がみんなを、みんなが言葉をみている四月、今どこに?
川上未映子(作家)
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「手紙」展
川上未映子×マームとジプシー「みえるわ」ツアーの記録
会場:本屋 Title(東京都杉並区桃井1-5-2)
営業時間:12:00 – 21:00
会期:6月7日-6月25日(毎週水曜・第三火曜定休)

◉橋本倫史「手紙」展 開催記念トークイベント
出演者:木村衣有子(文筆家)、橋本倫史(ライター)
日時:6 月18 日(月曜)19:30-21:00
会場:本屋 Title(東京都杉並区桃井1-5-2)

あれは何年前のことだろう。京都で木村衣有子さんと飲んだことがある。その日、木村さん
は取材したいお店があって京都を訪れたのだと言っていた。自分の気になるテーマを取材する
ために移動する。当時の僕は、その意味をまだよく理解していなかったように思う。でも、今
なら少しだけわかる。そこにある風景を記録するために、旅に出るということが。
2013 年の春から、僕はマームとジプシーの旅に同行し、ドキュメントを書き記し、本にまと
めてきた。去年の春には『月刊ドライブイン』を創刊し、ドライブインに取材を重ねてきた。
僕より早くからリトルプレスを作り、食文化にまつわる記事を数多く執筆されてきた木村衣有
子さんに、風景を記述することをテーマにお話を伺います。(文・橋本倫史)
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