2019/08/29
彼のまなざしについて、あらためてかんがえてみたいとおもった。たくさんの舞台をみつめつづけた、彼のまなざしについて。あの日から、叶わないものとなってしまった。みつめつづけてきた舞台を、みつめることができなくなってしまった、ということなのだとおもう。
あれからぼくもいろんな舞台をつくりつづけているけれど、いつだって、彼がいないという空白をかんじるのだった。みてほしい、というのが叶わなくなった。これをみたとき、なんて言うだろう、といつも想像しながらつくるのだけど。
彼がつくる舞台をたくさんの観客が、みつめたわけだ。そのひとつひとつのまなざしで。あのとき、なにをみつめていたのか、その感触を観客は憶えているか。演劇というそのときかぎりのものは、つまりだれかの記憶のなかにしか残らない。
ありとあらゆることをもちろん忘れていくなかで、残るものというのはどういうものだろう。彼は葛藤しつづけていたとおもう。そしてやはりみつめつづけていた。舞台を。すなわち、時代を。あのまなざしで。
ぼくもいつか、舞台をみつめることができなくなる。彼のまなざしをおもうというのは、同時にじぶんの、いつ訪れるかわからないその日をおもうことと変わらない。あれからすこし時間は経ったけれど、彼が稽古をしていた場所で。あらためて、立ち止まって、かんがえてみたいとおもった。
2019.8.18 藤田貴大
「まなざし」
構成・演出|藤田貴大
出演|成田亜佑美 吉田聡子
音響|竹内和弥(彩の国さいたま芸術劇場)
映像|召田実子
衣装|若林佐知子
ヘアメイク|赤間直幸(KoaHole)
衣装協力|trippen
宣伝ビジュアル|六月
会場|彩の国さいたま芸術劇場 NINAGAWA STUDIO(大稽古場)
日程|2019年10月11日(金)~10月15日(火)
主催・企画・制作|公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団
チケット料金(全席自由・整理番号付き)| 2,000円
一般チケット発売|8月31日(土) (チケットの購入はこちらより)