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ねじまき鳥クロニクル

〔東京〕2020年2月11日-27日/東京芸術劇場プレイハウス
*新型コロナウイルス感染拡大予防の観点より、2月28日以降の公演は中止となりました。

▽ パンフレットより(藤田貴大)

現場にて

まずぼくはこの「ねじまき鳥クロニクル」にインバル・ピントさん、アミール・クレガーさんがどういう風に出会って、なにをかんがえるかということに興味を持った。それと音楽は大友良英さんがいい、彼しかいないということもすぐにおもいついた。そしてイスラエルに住むふたりと、日本にいるぼくらとのやりとりはちょうど一年くらいまえから始まったのだけれど、それは想像していたよりもずっと刺激的なものだった。ふたりの手もとに「ねじまき鳥クロニクル」が渡ったことがうれしかった。大友さんはふたりに、音で返答をする。とても丁寧に読み解いていく様子を見つめながら、しかしそれをそうするんだ、それがそうなるんだという驚きに満ちていて、単純にたのしかった。そのたのしさというのは、原作があるものを舞台として実現させていくうえで大切なことだとおもった。つくづくおもっていることでもあった。もともとなんらかのかたちで世にでている、つまり原作というものをあつかうときに、なにを残して、なにを残さないか。忠実であることが、舞台化なのか。もちろん、わかるということは重要なことだ。しかもおおくのひとは、わかるということをたのしみに劇場にくるのかもしれない。けれどもわかるということとおなじくらい、わからないということも重要だとおもうのだ。わからない、ということをどう描くか。むつかしい、ということをどうたのしむか。ぼくはここにこそヒントがあると、つくづくおもっていた。イスラエルに住むふたりも、そして大友さんも、そのことぜんぶをたのしめるひとだった。ぼくはそれがうれしかった。彼らがつくっていくプロセスを日本語としてどう届くのかをかんがえながら、サポートしたいとこころからおもえた。ぼくらはこうして、現在という時間に「ねじまき鳥クロニクル」という現場にて、出会うことができてほんとうによかったとおもう。

藤田貴大(上演台本/演出協力)

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出演

岡田トオル役/成河・渡辺大知
笠原メイ役/門脇麦
綿谷ノボル役/大貫勇輔
加納クレタ・マルタ役/徳永えり
赤坂シナモン役/松岡広大
岡田クミコ役/成田亜佑美
牛河役/さとうこうじ
間宮中尉役/吹越満
赤坂ナツメグ役/銀粉蝶

<ダンサー>
大宮大奨、加賀谷一肇、川合ロン、笹本龍史
東海林靖志、鈴木美奈子、西山友貴、皆川まゆむ (50音順)

<演奏>
大友良英 イトケン 江川良子

スタッフ

原作/村上春樹
演出・振付・美術/インバル・ピント
脚本・演出/アミール・クリガー
脚本・演出/藤田貴大
音楽/大友良英
照明/ヨアン・ティボリ
音響/井上正弘
ヘアメイク/宮内宏明
通訳/鈴木なお
美術助手/大島広子
振付助手/皆川まゆむ
演出助手/西祐子
舞台監督/足立充章

主催/ホリプロ TOKYO FM

企画制作/ホリプロ

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