〔東京〕2018年12月21日-29日/LUMINE0
撮影:井上佐由紀
BEACH
明け方の、ここはビーチ
空が白んできたくらいの
うすい あわい 青色が
きょうという日を、始めていく
アスファルトに
熱が帯びていくのが、わかる
はやく サイダーが飲みたい
けれども もうすこしだけ我慢しよう
パラソルのした
色眼鏡の向こう ほんとうじゃない色
眠たいのはどうしてだろう
単調な波のリズムが、ここまで届いて
こうして 波を見つめていると
日々のいろんなことが
どうでもよくなったりするのだろうか
日没のまえの、このかんじ
ビーチサンダルのことを
フリップ・フロップス というらしい
かかとのところが、パタパタする様子
音を あらわしている
外灯に照らされた
真夜中の、駐車場
一台だけ クルマが、停まっている
あのなかに、だれかいるのだろうか
蝉の背中が割れるのも
なので、透明な羽根も
からだが色づいていくのも
わたしは見たことがない 記憶にない
森から、どうしてか流れ着いた
流木のいくつか
何年も、何十年もかけて
ここ このビーチに
BOOTS
そしてここは、森のなか
どうしてか わたしは
ここで だれかを
待っているのだった
季節は、おそらく冬だった
気温や 体温を
憶えているわけではない
けれども、窓から射しこむひかりのかんじが
そこには やっぱり速度が
速度が、伴っていたのだとおもう
いつだって、わたしは
だれよりも すこしうしろを
この部屋では
暖をとることができるのだけれど
凍えた ひとびとが
かならずしも ここを、目指すわけではない
鍵は いつからだろう
ずっと、かけたままにしてある
箱のなかには、なにが
はいっていたのだっけ
靴ひもを結んでいる時間は
いつだって、視線は 手もとにあるけれど
ほんとうは、ちがう場所のことを
もしくは すこし先の未来のことを
こまかな部品が、組み合わさって
できた このブーツならば
では、じゃあ この世界は
どういう風に、組み替えることが
かじかんだ この手を
どこへ 添えようか
たしかなのは わたしは現在
ブーツを履いている、ということ
[BOOTS]
石井亮介 荻原 綾 川崎ゆり子
中村夏子 成田亜佑美 長谷川洋子
[BEACH]
石井亮介 川崎ゆり子 中村夏子
成田亜佑美 長谷川洋子 吉田聡子
LUMINE0での公演期間中には2018年夏に発表したtrippenとの
コラボレーションシリーズ「BEACH」も上演いたしました。
作・演出/藤田貴大
照明/南 香織(合同会社LICHT-ER )
照明オペレート/平井奈菜子
映像/召田実子
舞台監督/原口佳子
宣伝美術/名久井直子 宣伝写真/ 井上佐由紀
衣装協力/ Harriss HARRISSMENS
メイク提供/THREE
制作/林 香菜 古閑詩織(マームとジプシー)
企画/trippen 合同会社マームとジプシー
共催/株式会社ルミネ
主催/合同会社マームとジプシー