mum&gypsy

ワタシんち、通過。のち、ダイジェスト。

〔東京〕2012年9月7-17日/三鷹市芸術文化センター 星のホール
〔福岡〕2012年928-30日/北九州芸術劇場 小劇場

撮影:飯田浩一

▽ チラシより(藤田貴大)

僕は思い出している。
常に思い出している。
あの家でのことを。
生活の、匂い。音。
僕は思い出している。
常に思い出している。
でも僕はいつしか。
あの家を通過した。
家を。街を。捨てた。
僕は思い出している。
常に思い出している。
今、ひとつの家が。
僕の、大切な家が。
壊されようとしている。
僕はそのことについて。
描かなくちゃいけない。
少し大きな規模で。
でも隅から隅まで。
家の。家族の。機微を。
描かなくちゃいけない。
僕は思い出している。
常に思い出している。


2012.6.28 藤田貴大

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▽ パンフレットより(藤田貴大)

『それをえがく、そのひつようと、せきにんなどについて』


極々、個人的なことなのだけれど、ぼくの祖母の家が無くなる、という風になっている。
ぼくはそれを描く、必要を感じているし。それに、どうやら。責任も感じているようだ。
家が無くなる。それは帰る場所が無くなる。ということでも、あるのだろうか。だとしたら。今まで、どれくらいの人たちが帰る場所を失ったのだろうか。
ぼくはそれを描く、必要を感じているし。それに、どうやら。責任も感じているようだ。
想像しながら。ぼくらは相も変わらず、繰り返す。繰り返し、想像する。想像の果て、ひたと身体に。言葉も音も。まるで着床して。何か、得体の知れないものが産まれるまで。繰り返す。繰り返す。
でも、そんな作業を。愚直にしたところで。
いよいよ帰る場所が無くなる。という。帰る場所を失う。という。まさにそのときに。
なにを想うのか。なにを思い出すのか。わからなかった。
でも、その、わからなかった。という、そのことが。
ぼくにとって。それは未来だったのだった。
また繰り返し、思い出すのだろう。そして繰り返し、想像するのだろう。たとえあそこが、そこに家があった、という痕跡すら残らないくらいの平地になったとしても。
ぼくは、ぼくのなかにある記憶の跡地へ。繰り返し、辿り着こうと。永遠に。彷徨うだろう。
ぼくにとって。それが未来だったのだった。

2012.9.6 藤田貴大

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出演

伊野香織 石井亮介 荻原 綾
尾野島慎太朗 斎藤章子 
高山玲子
成田亜佑美 波佐谷 聡 召田実子 吉田聡子

スタッフ

作・演出/藤田貴大
舞台監督/森山香緒梨
照明/吉成陽子 富山貴之 山岡茉友子
音響/角田里枝
舞台美術/細川浩伸
宣伝美術/本橋若子
制作/林 香菜
主催/[東京公演]公益財団法人三鷹市芸術文化振興財団
[福岡公演]マームとジプシー
共催/[福岡公演]北九州芸術劇場

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