mum&gypsy

彩の国さいたま芸術劇場× 藤田貴大ワークショップ公演vol.2
ハロースクール、バイバイ

〔埼玉〕2017年727日-30日/彩の国さいたま芸術劇場 NINAGAWA STUDIO(大稽古場)

撮影:宮川舞子

▽ パンフレットより(主催者挨拶)

本日は、藤田貴大ワークショップ公演Vol.2『ハロースクール、バイバイ』にご来場いただきまして、誠にありがとうございます。


彩の国さいたま芸術劇場では、藤田貴大さんとともに地域の人々との演劇作品を創作しています。まずは2016年、20代から70代までの公募による25名で『ドコカ遠クノ、ソレヨリ向コウ 或いは、泡ニナル、風景』を上演致しました。続く本年は、埼玉県内在住の中学生から20歳までの12名の出演者とともに、「マームとジプシー」で2010年に発表し高く評価された『ハロースクール、バイバイ』をさいたまバージョンにリニューアルして創作に挑みました。


3ヶ月間、出演者ひとりひとりと向かい合い、丁寧な作業を積み重ねて生み出された青春群像劇にどうぞご期待ください。


最後になりましたが、本公演実現のためにご協力いただいた関係者の皆様に心より御礼を申し上げ、ご挨拶とさせていただきます。


公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団
理事長 竹内文則

close

▽ パンフレットより(藤田貴大)

とおくからみつめていたあのころは、もちろん自分が何者なのか、まだわからなかった。


演劇とかいう、なんなのかわからないし、周りにもうまく説明できない「謎のなにか」に一生懸命になっていたわけだから、クラスのなかでもたぶん圧倒的に浮いていたし、たとえばクラスのみんなが季節について、熱く語っているわけだけれど、その季節がみんなにとって、なにを意味するのか。わかっているつもりだけれど、根本的なところでは、つながる部分はなくて、やっぱり季節のことすらわかることができないのだ、とおもっていた。


とおくからきこえてくるあの声たち、なにがくやしくて、なにがうれしいのか。それだってわからなかった。あのころの演劇(いまの演劇とはすこしちがう)に、勝敗なんてなかったし、勝ったことも負けたこともなかったから、やっぱりわからない。わからないけれど、ただすこしだけわかることがあった。出会ったり、別れたり、ってやっぱりさみしいよね、みたいなこと。


涙をぬぐいながら、校舎に帰ってくる女子たちを、とおくからみつめていた。あれは負けたから、というだけではないのだとおもう。きっとあれは、そういう季節だったから、季節とはそうか、このことで、季節が彼女たちをそうさせているのか、みんなが語っていた季節のこと、若干だけれど、理解が増したのかもしれなかった、あの瞬間。同時に、たしかにざわついた奥底の感触があった。


あのざわつきはぼくにとって大切な「謎のなにか」と無関係ではなくて。つまりあの日のあの光景は、ぼくにとっては演劇だった。


いまもこうして、ここで出会ったみんなと、あのころの光景を重ねながら、演劇をつくっている。


夏が始まる季節だったのを憶えている。


2016.6.30 藤田貴大

close

出演

宇田奈々絵 小島優衣 斉藤 暉 鴨志田ひよ
坂井和美 佐久間文子 鶴井美羽 富田夏生
福田真由子 藤井さくら 森田渉吾 山崎和子

スタッフ

作・演出/藤田貴大
演出アシスタント/伊野香織
企画制作/公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団 合同会社マームとジプシー
主催/公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団

©2018 mum&gypsy