2026/04/01
来年、マームとジプシーは20周年を迎えるんですよね。ただ――それは全部僕が自分で選んでることなんだけど――来年はオリジナルの作品を発表する予定は入ってなくて。だから、20周年までの区切りでいうと、これが最後の新作になる。 それで――タイトルが『dusk dark dawn』なんだけど、「dusk」と「dark」と「dawn」を、それぞれ30分の章で描こうと思っていて。夕暮れから、暗闇、夜明け。最初の「dusk」では、でっかい家が建っていて、その内側にライブカメラを仕込んで、観客には見えない空間がスクリーンに映し出されるイメージなんですけど、そこであっちゃんがずっと箒で掃いてるんですよ。そうそう、ちょっと未映子さんの『ウィステリアと三人の女たち』とも重なるんだけど、あっちゃんがずっと箒で掃いてる。 それは何を掃いてるのか、どこを掃いてるのかっていうと、かつてあった家ってイメージなんだよね。僕の中では、それはばあちゃんの家ってことになるんですけど、それは別に、テキストで説明しなくていいかなと思ってる。

ちょっと抽象的な話になっちゃうんだけど――11月って31日まであったっけ? そっか、30日か。去年の11月の最後の日が、上田で上演した『線に宿る 点を巡る 夜を歩く』の千秋楽だったんだけど、そこまで色々手伝ってくれた劇場の人とかも含めて、とにかく飲むわけです。そこからホテルに戻って――なんでかわかんないけど、一睡もできなかったんだよ。不安に押しつぶされそうになって。とにかく不安が――たぶん飲みすぎたってことなんだと思うけど――とにかく不安で。そのまま朝になって、古閑ちゃんとかやぎとかと一緒に朝食食べたんだけど、そのときも言ってたよね。「なんかわかんないけど不安だ」って。 それで――上田って信号が多いんだけど、「こんなに信号に止められたことってあったかな?」っていうぐらい、その日は信号に止められたんだよ。

これ、何なんだろうって思いながら、上田駅まで歩いて、新幹線で東京に戻ってきて――その日は打ち合わせがあったんですよね。新幹線から乗り換えて、打ち合わせ場所の最寄駅で電車を降りたら、駅前が火事だったんですよ。ヘリコプターも飛んでて、テレビとかでも中継されてたらしくて。 あとで調べたら、住宅街の奥まった場所にある一軒家が火元だったらしいんだけど、そこに住んでた90代の男性はたぶん亡くなってるんだよ。その火事を見たときも、『ウィステリア』のことを考えてたんだけど――打ち合わせが終わって家に帰ったあとで、その日は昼寝しちゃって。普段は昼寝なんてしないのに、その日はなんか寝ちゃってて。そこに電話がかかってきて、目が覚めたんだけど、それは「ばあちゃんが亡くなった」っていう電話だったんだよね。

いや、今、抽象的な話をしちゃってるなって自分でも思ってるし、「ばあちゃんが亡くなった」って話になったから、そう思ってしまってるだけだって自覚はもちろんあるんだけど、その瞬間に、なんか繋がった感覚があったんだよね。ばあちゃんが亡くなってなければ、繋がることなんてなかったはずなのに、繋がってしまった感覚があって。この作品を企画書レベルで考えてるときは、そんなことはまったく考えてなかったんだけど、去年の12月からずっと、そのことを考えてる。

(写真・構成 橋本倫史)
公演詳細・ご予約はこちらより
「dusk dark dawn」
作・演出:藤田貴大
出演:髙宮梢 仲宗根葵 中村未来 成田亜佑美
日程:2026年5月2日(土)〜6日(水)
会場:LUMINE0(最寄り駅:新宿駅)
〒151-0051 東京都渋谷区千駄ケ谷5-24-55 NEWoMan Shinjuku 5F