mum&gypsy

dusk dark dawn

VOL.2

2026/04/03

ばあちゃんが亡くなったとき、自分はもう群馬に帰らないだろうなって、直感的に思ったんです。いや、そう、この3年間、アーツ前橋に呼ばれて前橋の千代田町で滞在制作してきたし、また呼ばれたら行くとは思うんだけど、アーツ前橋とのつながりがなくなったら、いよいよ帰らないだろうな、って。

ばあちゃんはずっと前橋で暮らしていたわけなんです。それがもう、ばあちゃんが70歳くらいのときにじいちゃんが亡くなって、その数年後に住んでいた家を――区画整理をするということで――取り壊すことになって。それでばあちゃんは母がいる北海道の伊達に引っ越すことになる。でも、どこかで『ばあちゃんはこのさきも前橋に帰る時間があるんだろうな』と、なんとなく思ってもいたんです。すこしでも前橋に帰る時間があるんじゃないか、って。でも、あれから前橋には一度も帰らないまま、伊達で亡くなったんです。

20年前にじいちゃんが亡くなったときは、今思えば、悲しいって言葉が前に出てたんですよね。でも、今回のことは悲しいというだけの言葉では片づかないというか――考える時間がすごいあったというのもあると思う。『ばあちゃんが亡くなったら、前橋には帰らないだろうな』みたいな気持ちと向き合って、考える時間がたっぷりあった。だから、悲しいとかってシンプルな言葉では済まないところがあるんですよ。いや、もちろん悲しいのは悲しいんだけど、でもなんか、ばあちゃんとはずうっと話せてなかったなって感覚も同時にあるし、こう、じいちゃんのときとは違って、当てはまる言葉が見つからない、言語化できない感情が自分の中を渦巻き続けていて。

じいちゃんが亡くなって、そこから『待ってた食卓、』とか、『ワタシんち、通過。のち、ダイジェスト。』とかって作品を描いたわけだけど――あのときは僕の主観でじいちゃんのことを描いちゃってたなって思うんですよ。僕の主観で、僕の感情ってところで描いて、それはそれで評価された部分もあるかもしれないけど、なんとなく個人の記憶ってことばかりになっていたかもしれないと振り返る部分もあって。ばあちゃんのことは、あのころとは違うトーンで――しかもそれは僕個人の主観、記憶だけに留まらないようなトーンで――描きたいなって思ってるんですよね。

 

じいちゃんのことはああいうふうに描いたけど、ばあちゃんのことはじゃあどういうふうに描くの?と、そもそも自分自身に苛立っているのもある。ばあちゃんのほうが、じいちゃんより20年先まで生きたわけです。ばあちゃんのこと、というか、ばあちゃんと自分の間のことをなんにも描けていないんじゃないか、と苛立ってる。

ばあちゃんと自分の間のこと、でいうと――ばあちゃんが亡くなったとき、「たかは帰ってこなくていいから」って母に言われたんです。「葬式もしないし、私たちだけで見送るから」って。いや、葬式をやるとかやらないとかではなくて、それは僕とばあちゃんの間のことなので、って伝えて、半ば無理やり帰ったんですけど。「帰らなくていい」とかってことじゃないし、僕は不思議と未だに伊達の家が"家"だと思っている節があるわけだから、「帰らないとか、あるの?」ってだけなんだけど。

 

いや、今話している全部が、まあ、しょうがない、全部になにかしらの理由があるのでしょう、ってこともどこかではわかっているし、現実というレベルでは納得していないわけではないんだけど、ぜんぜん違うベクトルでは、全部納得いっていないし、なんか強くもやもやしているんですよね。これ、まだうまく言葉にならないんだよな。そもそも人を描く、描こうとするってなんなんだよ、っていうのもあるとは思うんだけど、僕はやっぱり描くし、描かないとわからない、もっと言うと描かないと生きてゆけないんです。

 

そう、その部分を――言葉にならない感覚について考えたいなと思ってるんです。個人的な感情から始まってはいるけれど、個人の記憶だけに留まらない、言葉にならない感覚について。なんかそういうバランスを、『待ってた食卓、』もそうだし、『帰りの合図、』もそうだし、『ワタシんち』もそうだし、『ΛΛΛ』もそうなんだけど、あっちゃん(成田亜佑美)の身体と共に長年に渡って考えてきたことがあったなあ、と振り返っていたんです。そこは青柳との作業とも違うところで考えてきたんですよね。その先にある作品として、今回あっちゃんにどんな言葉を語ってもらおうかって、研ぎ澄ませている部分はありますね。

(写真・構成 橋本倫史)

 


公演詳細・ご予約はこちらより

「dusk dark dawn」

作・演出:藤田貴大
出演:髙宮梢 仲宗根葵 中村未来 成田亜佑美

日程:2026年5月2日(土)〜6日(水)

会場:LUMINE0(最寄り駅:新宿駅)
〒151-0051 東京都渋谷区千駄ケ谷5-24-55 NEWoMan Shinjuku 5F

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