mum&gypsy

dusk dark dawn

VOL.3

2026/04/07

「真夜中、繋がった感覚があった」。今回の作品では、その感じを描いてみたいんだよね。

これは、ばあちゃんが亡くなる前から考えていたことでもあるんだよ。上田で上演した『線に宿る 点を巡る 夜を歩く』――そこで“こじこじ”が寝返りを打つシーンを描いたけど、『これを3人でやったらどうだろう?』ってことは、上田の場当たりのときから考えてて。今回、2章の「dark」では、特に言葉とかじゃなく、身体表現でやりたいと思ってる。言葉じゃなくて、音でもなくて、「真夜中、繋がった感覚があった」ってことを身体でやれないか、って。

イメージとしては――そこに3つの部屋がある。3部屋の女性が、ずっと眠れずにいる。そこで寝返りを打っているうちに、部屋が同化していく。3人の姿が重なり始めるんだよ。そうすると、ちょっと牛の姿に見えてくる。

そう、牛。亡くなったばあちゃんには、お姉さんがいたんだよ。群馬の山のほうに住んでて、“山のおばさん”って呼ばれてたんだけど。その“山のおばさん”は、戦前は満州に住んでて、夫は日本軍の騎兵隊だったの。だから、徴兵されたとかじゃなく、職業軍人として満州に行ってたらしくて。

その“山のおばさん”夫婦が、一回だけ伊達に旅行に来たことがあるんだよ。“山のおばさん”は、お酒を飲むと夫のことを悪く言う。あんたのせいで、って。ふたりは満州にいたから、1945年に――とにかくもう、逃げるしかなかったらしいんだよね。どうにか海に辿り着いて、日本に船で渡って、やっとのおもいで群馬まで逃げてきた、って。

山のおばさんにはそのころ、こどもがふたりいたんだけど、前に抱いてたこどもも、後ろに背負ってたこどもも、ふたりとも群馬にたどり着いてから亡くなってしまって、「わたしはひとりで、ふたりを山で焼いた」と。その話を、お酒を飲みながら毎晩するんだよ。それを夫は黙って聞いてるわけ。僕も小学生だったんだけど、それ、すごい記憶に残ってるんだよね。

その夫も、かなり印象深い人で、腕時計が常に10分先に進めてあって、つまり10分前行動できるようにしてあるのね。ちょっとした、あそこのお土産屋さんの前で、って時も10分前にはそこにいる。温泉に一緒に入って、すこし話したときも、ものすごく丁寧な敬語で小学生の僕に話しかけてくれて、めちゃくちゃ不思議だった。

これも小学生のときの記憶なんだけど、その山のおばさん夫婦は牧場を営んでたんだよ。その牧場に遊びに行ったとき、牛舎の前で牛が倒れていたことがあって。出産のときに、その生まれてくるはずだった子牛ともども死んだらしいんだけど、ものすごい臭いだったのをおぼえてる。あのときのことは『ヒダリメノヒダ』でも描いてるんだけど、その光景が浮かび上がってくるような章に、「dark」はしたいんだよね。

ばあちゃんが亡くなって、山のおばさんのことも思い出したときに――その夫婦は満州からとにかく東に向かうわけだよね。石橋英子さんのお父さんも、当時は満州にいて日本に引き揚げてきた、という話を同時に思い出した。2018年に『ΛΛΛ かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと―』を再演したとき――あの作品は英子さんに音楽をお願いしたんだけど――英子さんからその話を聞かせてもらって、それでできあがったのが『To The East』って曲だったんだよね。だから今回、音のことはまだあんまり考えられてないけど、『To The East』は作中のどこかで、って思ってる。

(写真・構成 橋本倫史)

 


公演詳細・ご予約はこちらより

「dusk dark dawn」

作・演出:藤田貴大
出演:髙宮梢 仲宗根葵 中村未来 成田亜佑美

日程:2026年5月2日(土)〜6日(水)

会場:LUMINE0(最寄り駅:新宿駅)
〒151-0051 東京都渋谷区千駄ケ谷5-24-55 NEWoMan Shinjuku 5F

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